テレビアニメの原点
『鉄腕アトム』は、フジテレビ系列にて、1963年1月1日に放送が開始されました。
原作は手塚治虫原作の同タイトルの漫画で、主人公のアトムはロボットです。
日本初の30分枠で放映した本格的なテレビアニメーションであり、日本初のSFロボットアニメでもあります。
当時はまだ白黒テレビが主流であり、本作品は一部を除き、モノクロになっています。当時はまだアニメーションの手法もあまり確立しておらず、「アニメ」という言葉自体も日本では馴染みのないものでした。そのため、「テレビまんが」などと呼ばれていたようです。
今のアニメのようにキャラクターが滑らかに動くような作画ではなく、紙芝居のコマを一部切り出して動いているように見せており、品質は決して高くはありませんでした。
しかし正義のヒーロー、アトムが何らかの悪と対峙し、倒していくという勧善懲悪のストーリーは子供達を中心に人気が出て、アニメも高視聴率でした。
後に、人気キャラクターとなったアトムは様々な商品化がされ、これがテレビ放映では利益を上げずとも、商品展開で稼いで元を取るという現在のアニメの商業モデルを確立しました。
当初は半年で放送が終わる予定でしたが、この人気を受け、1966年12月31日まで放送されました。
アトムはテレビアニメの負の遺産?
よく、アニメーターの低賃金が問題視される事がありますが、その原因の一つに、「手塚治虫がアトムをテレビアニメとして放映するために、格安でアニメ制作を請負ったから」と言われる事があります。
確かに、当初はアトムの知名度を上げる事が目的であったため、手塚本人もお金を出して安い値段で請負ったそうですが、アトムは想像以上の大ヒットとなったために、請負った金額が安すぎると言われる所以になってしまったようです。
しかし当時はそうでもしないと、いくら長期連載で人気漫画だったアトムといえど、テレビアニメという実績の無い物を放映なんかに使ってもらえなかったのです。また金額面の問題よりも、毎週放映しなくてはいけないために制作環境が過酷なものになってしまう事が負のイメージに繋がってしまったようです。
『鉄腕アトム』では、無理やり納期に間に合わせるために、今までに使った作画を繋ぎ合わせて作った話もあるのだそうです。
今だと、アニメの作画はファンも高クオリティなものに慣れすぎて「使い回しだ!」と炎上するでしょうね。
その後もリメイクされたアトム
1960年代にモノクロで放送されたアトムは、その後も何度かリメイクされており、1980年(カラー版)と2003年(アストロボーイ・鉄腕アトム)が放送されています。
それぞれの年代でアトムのテイストは異なっており、第1作のモノクロ版は単純明快な勧善懲悪モノでしたが、2003年版では人間とロボットの対立をもっと深く、より複雑なテーマとして扱うなど、原作に近いシリアスな描写も多いようです。